運送会社の管理者様は必ずご確認ください
労働関係の法令が改正されています。運送会社の管理者様は情報収集の機会をお持ちでしょうか?
2019年4月から少しずつ施行されていきます。
まずはこちらでご確認ください。
<中小企業様向け(300人以下の会社様)>
施行日 | 解説 | |
運転手の時間外労働の上限規制が年960時間 | 2024年4月1日 | 事務員は2019年4月から施行(年720時間) |
月60時間超の時間外割増賃金率の引上げ (25%から50%へ) | 2023年4月1日 | |
年5日の有給休暇の取得義務 | 2019年4月1日 | |
労働時間の適性把握義務 | 2019年4月1日 | 管理監督者やみなし残業制の場合でも労働時間の記録が必要 |
産業医・産業保険機能の強化 | 2019年4月1日 | 残業が一定時間を超えた労働者から申出があった場合には医師の面接指導が必要 |
勤務間インターバル制度の導入促進 | 2019年4月1日 | 義務ではないが、仕事と仕事の間に休息時間を確保する規則を作成するなど |
パートタイム労働法・労働契約法 | 2021年4月1日 | 基本給、賞与、手当などの待遇に不合理な差をつけることが禁止 |
労働者派遣法 | 2020年4月1日 |
「 運転手の時間外労働の上限規制が年960時間」とは
おそらくほとんどの運送会社では運転手の皆さんと労使協定を結び、いわゆる「36協定」を届け出ているはずです。
この36協定がないと運転手が残業ができず、労働集約型産業の運転手は稼ぐことができず辞めていってしまいます。
今まではこの36協定を届け出ることにより上限無く残業をすることができました。
そして、これからは運転手の働き方も変わっていく必要があります。
<中小企業の改正内容>
改正前の残業時間の上限 | 改正後(2024年4月〜)の残業時間の上限 | ||
36協定なし | 月45時間・年360時間 (行政指導) | 月45時間・年360時間 (法律) | |
36協定あり | 年6ヶ月の上限なし | 事務員 2020年4月1日施行開始 | 運転手 2024年4月1日施行開始 |
年720時間 月100時間 (月平均80時間) (法律) | 年960時間 (法律) |
※「土曜日が出勤日」となっている会社であっても「月曜から土曜までの労働時間が週40時間を超えている場合」は超えた時間は「時間外労働時間」として計算されます。
この改正は「事務員」と「運転手」で施行日が違います。
猶予という言い方をしていますが、2024年までに社内で働き方を検討実施する必要があります。
事務員 | 運転手 | |
労働基準法による時間外労働の 上限規制施行日 | 2020年4月1日 | 2024年4月1日 |
ちなみに300人以上の大企業では2019年4月1日から施行がされています。
「 月60時間超の時間外割増賃金率の引上げ」とは
時間外割増賃金とは残業代のことを言います。現在、基本給単価が「1000円」の従業員には残業代としては最低でも「1250円」を支払わなければなりません。
これは1000円に対し、時間外割増賃金率が25%であるため1000×1.25=1250となる計算です。
さらに残業を22:00〜翌5:00の間でおこなわせた場合にはさらに25%分(つまり50%)を加算する必要があるため、1000×1.5=1500となり残業単価は1500円で計算しなければなりません。
そして引き上げられたのは1ヶ月の残業時間の60時間を超えた部分です。
割増率50%で支払わなければなりませんが、中小企業は適用が猶予されています。(中小企業=300人以下の会社)
施行日 | 解説 | |
月60時間超の時間外割増賃金率の引上げ (25%から50%へ) | 2023年4月1日 | ※中小企業以外は2010年から適用済み |
長時間労働は好ましくないかもしれませんが、運転手さんに適切な計算により多くの給料を持ってかえってもらうことは管理者としてはとても嬉しいことだと思います。
大企業はもともと50%としていましたが、中小企業も同様となりました。
整理しながら確認をしていってください。
<割増賃金は3種類>
割増部分 | 割増率 | |
①残業代 | 法定労働時間(日8時間・週40時間)を超えた部分 | 25%以上 |
月45時間〜60時間・年360時間を超えた部分 | 25%(以上が望ましい) | |
月60時間を超えた部分 | 50%(2023年4月に施行) | |
②休日割増 | 法定休日(たいていは日曜日) | 35%以上 |
③深夜割増 | 22時から翌日5時までの部分 | 25%以上 |
「 年5日の有給休暇の取得義務」とは
有給は入社後半年で「10日」間の有給日が付与されます。
その後1年ごとに毎年1〜2日ほど増加しながら付与されていきます。
正社員に与えられる年間の有給日数 | |||||||
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
会社としては運転手の希望を聞く必要があります。そしてその希望によって取得時季を指定するように努力しなければなりません。
管理者や配車係は運送会社の繁忙期である3月や12月に多くの運転手が有給を取得申請した場合には、会社が回らなくなり廃業の恐れが出てきます。
どの業種でも繁忙期を説明した上で入社しているはずですが、このような場合には会社側としては「時季変更」として「有給を取らせない」ではなく、「有給希望日を別日に変更してもらう」ようにすることが出来ます。
有給はお金で買い取ることは禁止されています。
しかし、有給を取得させることは義務ではなかったため、稼ぎたい運転手は休まずに働くことも選択出来ました。
そして2019年4月からは年5日の有給取得は会社側の義務となります。
管理者や配車係の調整は必須となりますが、必ず取得させるように計画をたて、有給を取得したことが把握できるように管理簿等で記録しなければなりません。
2年に1度来る巡回指導に向けて
適正化の巡回指導は各都道府県トラック協会の会員・非会員を問わず全ての運送会社に対しておこなわれます。
日々の実務の中で少しずつ取り入れていき、安全風土の形成と証拠書類の確保を積み重ねていくことが大切です。