運送会社では倉庫業の許可や登録が必要なのでしょうか?
運送会社では荷主さんから「倉庫を借りてくれませんか?」と相談を受けることがあると思います。
また、「倉庫がないなら、倉庫を持っている運送会社を紹介してくれませんか?」とも言われてしまいます。
メインの荷主さんからそう言われると他社を紹介なんて出来ません。
運送業許可しか持っていない運送会社としては【倉庫の悩み】は常にあると思います。
実際に倉庫業の許可は必要なのでしょうか?
許可ではなく登録が必要
どちらでも良いと思うかもしれませんが、倉庫業は【許可制】ではなく【登録制】です。
なので、必要な場合には登録をすることになります。
ただし、どちらも申請をすることに変わりはありません。
当サイトでは分かりやすくするために【許可(登録)】としておりますが、同じ意味として捉えて頂いて構いません。
いる場合/いらない場合
荷主さんの立場からすると、運送会社に【倉庫】という武器があるだけで業者としてとても使い勝手が良く、運送の依頼がしやすくなります。
しばらく預かっていて欲しいと言われた
荷主さんから「いつ工場から出荷されるか分からないので、スペースが邪魔なので運送会社さんの方で預かってもらえませんか」と言われた場合です。
この場合には運送会社側で荷物を預かり、保管料を取る場合が想定出来ますが、倉庫業の許可(登録)は必要となります。
一般的にも倉庫として営業する場合のパターンです。
納品先は決まっていないが一時保管をして欲しいと言われた
荷主さんから「運送会社さんに運送を依頼するので、一時保管という形を取ってくれませんか」と言われた場合です。
「一時保管」という名目では運送業許可だけで問題がなさそうですが、この場合も保管料を取る場合は、たとえ「一時的な保管」だとしても倉庫業の許可(登録)は必要となります。
荷主さんから3ヶ月の期間限定で仮置したいと言われた
荷主さんから「倉庫を借りてもらえませんか?3ヶ月や6ヶ月ぐらいの短期なので、探すの面倒だし運送会社さんの倉庫を使わせてもらえると助かるんだけど…」と言われたような場合です。
運送会社としては「荷主さんから提案を頂いたので断ることは出来ない!」「事業拡大のチャンス!」と考えて依頼を受けたくなるところです。
しかし、倉庫の営業許可を持っていない会社は短期の場合は安易に受けるべきではなく、検討が必要です。
たとえ短期の場合でも倉庫業の許可(登録)は必要となり、そのために許可取得のために多くの時間と費用を投じることになってしまいます。
運送会社さんの場所に置かせてくれと言われた
荷主さんから「運送会社さんの倉庫スペースにウチの荷物を置かせてくれませんか」と言われた場合です。
運送会社の実務としてはこのケースが一番現実的な方法です。
今までと何が違うのでしょうか?
細かい部分ですが、「預ける/預かる」のではなく「置く/置かせる」の違いです。
「預ける」場合は法律用語としては「寄託」と言い、荷物に関する責任は【預かった側=運送会社側】が負うことになります。
つまり、荷主さんが運送会社の倉庫スペースに【荷物を置く】だけとして、荷物の責任は【置いた側=荷主側】とすることで倉庫業の許可(登録)は不要となると考えることが出来ます。
イメージとしては、運送会社と荷主さんとで賃貸借契約をする形であれば倉庫業の許可(登録)は不要です。
賃貸借契約であれば、他人の荷物を預かっていることにはなりません。
お金を取るか/取らないか
結論としては、お金を取らなければ「営業ではない」ので営業許可は必要ありません。
なので、さきほどの「一時保管」の場合などでも保管料等のお金をもらわずに「運賃だけの請求」であれば倉庫業の許可(登録)は不要です。
保管料を運賃に含めてしまう場合
請求書に「保管料」等の文字を無くし、全てを「運賃」として請求すれば良いのではないかと考えてしまいます。
しかし、このあたりはグレーではなく、やはりやってはいけないブラックなことと捉える必要があります。
実際、許可の必要性を分からないまま倉庫営業をしてしまっているケースもあると思いますが、いわゆる「知らなかったでは済まされない」ということ部分ですので、必ず確認をするようにしてください。
なぜ分かりづらいのか
適正化の巡回指導との関係
運送会社には2年に1度の巡回指導が必ずあります。
適正化の巡回指導は運送会社が営業するにあたり、基本的に全ての部分をチェックされることになります。
しかし、適正化の巡回指導はあくまで運送業の部分に限って確認をしているので「倉庫業の許可を取っているか」「飲食業の許可を取っているか」などは確認もせず、たとえ気づいたとしても何もアドバイスも出来ません。
運送業も倉庫業も運輸局へ申請をしますが、運送業と倉庫業は全く別の営業として許可が判断されることになります。
倉庫を貸し出す倉庫会社や不動産屋さんとの関係
倉庫を借りる場合に、倉庫会社や不動産屋さんに相談して物件を決めることなりますが、その際に倉庫の営業許可のことは言われるのでしょうか?
業者さんからは営業許可のことは確認されることも言われることもありません。
不動産業者さんとしては倉庫の営業許可の有無に関わらず、倉庫を貸すことが出来てしまいます。
業者さんの言い分としては、「自社(運送会社)の荷物を置くために倉庫を借りたと思っていた」となるでしょう。
契約後のキャンセルには大きな費用もかかるケースも考えられますのでご注意ください。
倉庫の登録業者の確認方法
倉庫業の登録がされているかは、国土交通省のwebサイトから確認することが出来ます。
この情報は誰でも確認が出来てしまいます。
ダウンロードしたEXCELシートに業者名や倉庫住所が掲載されています。
最近では、行政よりも荷主さんの方が「無許可営業」にアンテナを張っています。
これから営業倉庫をご検討中の場合には、弊所などに事前にご相談頂くことをおすすめしております。
現在、倉庫として存在するものは「自家用倉庫」と「営業用倉庫」があり、「自家用倉庫」を借りてしまった場合は倉庫営業が難しくなってしまう場合も考えられます。
倉庫業の許可(登録)の必要性の有無や申請がご不安な場合は当事務所へご相談ください。
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