整備管理者を選任する

運送会社では整備管理者を選任することが必ず必要です。

運送会社では出発前に点呼を行ないますが、その出発時に【日常点検】というものをおこなっています。

その日常点検の結果で「今日は運行してOKです」と判断する人が整備管理者です。

その他にもいろいろと仕事はありますが、運送業を行なっていく上で整備管理者はとても大事なキーマンですので、必ず確認をしてください。

整備管理者になれる人

【社長】=【運行管理者】=【整備管理者】はOK?

運行管理者や整備管理者が会社を辞めてしまうと大変です。

そうならないために、「【社長】=【運行管理者】=【整備管理者】はOKですか?」とご相談されるケースはよくあります。

特に創業時ですが、最低人数で事業を始めるためにもこのように考える社長さんはいらっしゃいます。

OKサイン

社長が兼務するパターンはOKです。

ただし、社長一人で全ての管理をすることは出来ません。

仕事ができるスーパー社長さんでも物理的にも不可能です。

このような場合には、「運行管理補助者」と「整備管理補助者」を選任することが必要となります。

【整備管理者】=【運転手】はOK?

【整備管理者】=【運転手】は良いのでしょうか?

丸とバツ

こちらも問題ありません。

整備管理者は、運転手さんでも事務員さんでも社長さんでも問題はありません。

ただし、整備管理者に選任された人は管理者として会社内の車両整備について管理、把握しなければなりません。

分解をしなければならない整備に関しては整備工場でなければ出来ませんが、整備管理者は「整備工場に整備させること」が仕事ですし、定期点検の実施計画を立てることも必要です。

運転手さんに兼務してもらう場合でも実際にその管理が出来る人に「整備管理者」になってもらいましょう。

整備管理者の【要件】

整備管理者になるには2つの方法があります。

AまたはBの方法となりますが、運送会社ではBの方法が多いかもしれません。

A: 資格を取得していること

合格証書

ひとつ目の方法ですが、一級~三級の自動車整備士の資格を持っていることです。

自動車整備士の資格は「ガソリン」「ディーゼル」のどちらでも大丈夫ですが、取得までに非常に時間がかかります。

基本的には「実務」+「筆記試験」なので時間と難易度を考えるとハードルは高く、もともと資格を持っている人がいる場合には確実な方法です。

B: ①整備の実務2年+②選任前講習

整備の実務経験が2年あること」かつ「選任前講習を受講する」ことで整備管理者となることができます。

①整備の実務が2年間

実務経験証明書

整備の実務経験とは、簡単に言うと「運送会社で整備していた経験」でOKです。

例えば「2年間以上、運送会社の運転手として日常点検をしていた」という経験が実務経験にあたります。 

運送会社ではない白ナンバーの会社で点検をしていた場合は基本的に実務経験となりません。

この実務経験の証明ですが、「点検実務をしていた会社」に証明をしてもらいます。

以前は書面に押印やサインが必要だったので、すでに退職してしまっている場合には、その「退職した会社」に押印等をもらわなければなりませんでした。

現在では押印は省略となりましたが、勝手に書類を作成することはしてはいけませんので、必ず 「点検実務をしていた会社」 に確認を取るようにしていく必要があります。

また、整備の実務は「運送会社で整備管理補助者として整備管理をしていた」場合もOKです。

②選任前講習を受講

選任前講習

整備管理者の実務経験が満たされている場合は、いち早く選任「前」講習の予約をしていきます。

この予約がなかなか取れないのが実務としては頭を悩ませるところです。

年に数回しか開催されず申し込みも殺到します。
そして「申し込みをする期間」も決められていることが多いので申込可能期間中にいち早く申し込まなければなりません

この整備管理者の講習は「選任前」と「選任後」があり、間違えやすいため注意が必要です。

選任前講習は各運輸支局が主催となって実施されていますが、予約方法をメールやFAXに限定しているところも多く「予約方法」に関しても事前に確認をしておくと良いでしょう。

整備管理者がいない場合

整備管理者がいない場合は、「整備管理者になれる従業員を新しく雇う」または「今いる従業員の中で実務経験を満たす人がいないか確認する」という方法が現実的です。

運送会社として事業を継続している場合には、今の従業員さんに整備管理者になってもらうことは簡単です。

また、「日常点検を実際におこなっていた従業員」ではなく、管理者側として「整備管理補助者として車両管理をおこなっていた従業員」でも整備管理者になることは出来るので多くの候補者がいるはずです。

整備管理の外部委託は運送会社はNG

注意:トラック運送業では、整備管理を外部に委託することは出来ません。

整備自体を整備工場に任せることは良いのですが、管理は自社内でしなければなりません。

運送会社の新設時など整備管理者の選任に苦労する場合もありますが、外部委託をすることは出来ないので人選なども早めに検討しておきましょう。

参考

トラック運送業と異なり、レンタカー事業では整備管理を外部委託することが出来ます。

整備管理者と整備管理補助者

整備管理補助者とは、「整備管理者の代わりに整備管理の業務を行う人」です。

整備管理補助者の選任は義務ではありません。

そのため整備管理補助者は選任をしていない会社もありますが、確実に選任していた方が良いですね。

便宜上も実務上も選任をしておいて損はありません。

整備管理補助者の届出は不要

社内掲示

整備管理者を選任した場合は運輸局に選任届出をする必要がありますが、補助者を選任をした場合は、届出は不要です。

ただし、補助者が整備管理業務をする際には「あらかじめ選任しておく」ことが必要なので、他の従業員にも選任されたことが分かるようにこのような社内掲示などをしておいてください。

整備管理「補助者」の講習について

整備管理者と補助者の関係

整備管理者を選任した場合には、基本的に2年1回は「運輸支局の選任講習」を受けなければなりませんが、補助者を選任した場合に、その補助者は講習受講の義務はありません。

その代わりに「整備管理者から教育を受ける」ことが必要になってきます。

整備管理者が 「運輸支局の選任講習」 を受講してきた場合にもその内容を整備管理者から教えてもらわなければなりません。

補助者はあくまで「整備管理者の補助」ですので、「整備管理者の責任」で整備管理をおこなっていくことになります。

整備管理「補助者」を選任したらおこなうこと

整備管理者から補助者に対し、整備管理の教育をおこなっていきます。
これは「整備管理規程」と「選任前講習で受講した内容」をもとにおこないます。

次に前述のような掲示物で「補助者として選任されていること」を社内公示していきます。

そして整備管理者は継続して補助者に対して教育をおこなっていく必要があります。

整備管理規程は改正もありますが、整備管理者が受講している「2年に1回の選任後講習」でも改正内容が盛り込まれているので、受講した内容は随時補助者へ教育をおこなっていくことが大切です。

実務アドバイス

運送会社の整備管理者はとても重要です。

突然の退職なども考えられるため、「整備管理者になれそうな人」を複数人想定しておくと実務的には今後が安心です。

ただし、整備管理者の人数があまりに多すぎると【選任後講習】選任された整備管理者全員が受けなければならないため大変です。

整備管理者の人数を絞っておき、整備管理補助者を一人以上選任しておくことが良いですね。

整備管理者から整備管理補助者への教育内容は【日時・教育内容】を記録しておき、社内保存をしておいてください。

また、教育内容や整備管理規程も最新であるかを確認することも大切です。