令和4年5月13日から、トラック積載の【はみ出しルール】が改正施行されます。
これはとても驚くべきところですが、基本的には条件が緩和されています。
はみ出して運ぶ可能性がある事業者さんや荷主さんには必ず把握をして頂きたいところです。
以下のように走れるのは、令和4年5月13日からなので注意をしてください。
図で解説
前後の「はみ出し」
単管パイプなどの長物や後ろのあおりを切って走るような長尺な貨物などが該当するかもしれません。
図では2t平で説明をしていますが大型トラックやトレーラでも同じですので、全体の何%のはみ出しまでOKなのか数字を置き換えて判断してください。
後ろに1/10までのはみだし→◯
この図のように、後ろにトラック全長の1/10までのはみ出しルールは今までどおり「警察等に申請をせずに」通行が可能です。
単管パイプなどの長物をこのような状態で走らせている事業者さんは多いと思いますが、1/10を超える場合でも警察に申請することで走行は可能となる場合があります。
ただし、警察許可でも全長の1.5倍以上は不可になってしまうでしょう。
このあたりは地域によって道路事情や状況にもよりますので、一概には判断が出来ないところです。
車両の積載制限を超えて運行したい場合は、警察へ「制限外積載許可」の申請をおこなうことが必要となります。
この申請は「出発地の警察署」に申請するものですが、許可取得までに時間がかかり、基本的には運行1回ごとに申請が必要となります。
(車両・荷物・経路・積み方が同じであれば1回の申請で最長1年有効)
また、許可の可否は「申請先の各警察署」で判断されるので、道路事情等で運行不可となる場合もあります。
前後のはみ出しルールについては、「後ろのあおりの高さ分までOK」や「赤旗を付ければOK」といった独自解釈をされている運転手さんも見受けられます。
そのような解釈は正しくありませんので、はみ出して運ぶ際は、必ず「車検証の全長」と「はみ出した部分の長さ」を確認するようにしてください。
荷物全体で全長の2/10のはみ出し→◯
こちらの「全体の2/10までOK」というところが今回の改正のポイントです。
今までは「全体の1/10まで」だったのが、「全体の2/10まで」となると運ぶことのできる貨物の種類が増え、「今まで仕事を断っていた運行」や「事前に警察に申請していた運行」もすぐに積載して運行することが出来るようになります。
ただし、走行安定性等が確保されており周囲の交通に与える影響がほとんどないこと等が確認された場合にのみ、走ることができるので注意が必要です。
後ろに1/10超過のはみだし→✕
こちらも「全体の2/10以下」となっている場合ですが、NGの理由としては「後ろだけで2/10が出る」という場合です。
こちらは「前だけで2/10が出る」場合も同様にNGです。
「前のはみ出し」と「後ろのはみ出し」はそれぞれ「全体の1/10まで」となっているので間違えないようにしてください。
ななめに積載
こちらも今まで同様に貨物をななめに積載した状態でも問題はありません。
ただし、ショートボディのトラックの場合には、前の高さには注意をしてください。
基本的には3.8m(道路等によっては4.1m)を超えてはいけませんので、長物をななめにして運ぶ際は貨物の強度も含めて安全に運ぶことができるか検討してください。
横幅の「はみ出し」
「横幅のはみ出しルール」も「前後のはみだしルール」とほぼ同じとなりました。
今までは基本的にトラックの幅からはみ出して運ぶことが出来ませんでしたが、法改正によって運行が可能となります。
荷物全体で車幅の2/10のはみだし→◯
この図のように横幅をはみ出しても走ることが出来ます。
ただし、こちらも十分に走行安定性等を確保してください。
特に図のようにサイドミラーが隠れる場合は危険です。
しっかりと走行状態を想定してから運送するようにしてください。
左右の片方で車幅の1/10超過のはみ出し→✕
こちらのNGの理由は「前後のはみだしルール」の考え方と同じです。
「右側のはみ出している部分(20cm)」が「車幅の1/10(17cm)」を超えているので、このままでは運行は出来ません。
必ず「片方だけで1/10を超えていないか」と「合計が2/10を超えていないか」を確認するようにしてください。
新旧の比較
道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和4年政令第16号)が根拠となりますが、令和4年1月6日に公布され、令和4年5月13日に施行となりますので、5月13日を境に全国的にルールが変わります。
■旧(改正前)
(自動車の乗車又は積載の制限)
第二十二条
三 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さを超えないこと。
イ 長さ 自動車の長さにその長さの十分の一の長さを加えたもの(略)
ロ 幅 自動車の幅(略)四 積載物は、次に掲げる制限を超えることとなるような方法で積載しないこと。
イ 自動車の車体の前後から自動車の長さの十分の一の長さ(略)を超えてはみ出さないこと。
ロ 自動車の車体の左右からはみ出さないこと(略)。
■新(改正後) 令和4年5月13日施行
(自動車の乗車又は積載の制限)
第二十二条
三 積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さを超えないこと。
イ 長さ 自動車の長さにその長さの十分の二の長さを加えたもの(略)
ロ 幅 自動車の幅にその幅の十分の二の幅を加えたもの(略)四 積載物は、次に掲げる制限を超えることとなるような方法で積載しないこと。
イ 自動車の車体の前後から自動車の長さの十分の一の長さ(略)を超えてはみ出さないこと。
ロ 自動車の車体の左右から自動車の幅の十分の一の幅(略)。
実務上の注意点
平ボディで荷物を運ばれる会社さんやトレーラ等で運送する事業者さんなどには、実務に直結する内容です。
今までは平ボディのトラックを所有している会社さんは、資材やコンテナなどの多くの荷物が「ギリギリ運べなかった」という状況があったと思います。
改正後には「幅出しですぐに運行をしたい」と思われている管理者さんも多いかもしれませんが、まずは準備と社内ルールを決めるようにしてください。
社内ルール決めと社内教育
運転手さんには、幅出しのルールを事前に周知させることが大事です。
「法令上でOK」だとしても「社内ルールで、はみ出し走行はNG」と方針を決めることもありかもしれません。
「自社では〇〇の条件の時にだけ、幅出し運行をOKとする」などの社内ルールを策定をすることが大切です。
基本は、安全を最優先にすることが一番大事です。
- 何%までの幅出しをしてよいのか
- スケール(メジャー)等を車載しているか
- 積載前に管理者に電話をするのか
- 走行OKの判断は誰がするのか
- はみ出し走行時の時速はどうするか
- トラックのアオリを倒しても地面につかないか
- 新車トラックの購入はアオリを切ること前提とするか
このようなことを事前に会社の方針として決めておくと良いでしょう。
また、幅出し走行をする場合には、なるべく右側だけをはみ出させる積載方法が安全です。
走行中の左側の後方は、サイドミラーを通して確認をするためよく見えるようにはみ出させない方が良いでしょう。
右側はサイドミラーもしくは体を乗り出して直接目視で確認をすることが出来ますし、気づきにくい街路樹や建物の庇(ヒサシ)部分にも注意しやすくなります。
ただし、荷物の重心や積載方法などによりますので積載時の柔軟な判断が必要となりますので、事前の安全会議などで社内ルールを通達しておきましょう。
荷主さんや他社さんとの打ち合わせ
また、荷主さんとの事前打ち合わせも必要です。
- 業務としてはみ出し走行をすることが前提なのか
- 安全に運べそうにない場合に断ることが出来るのか
- 運行可否の決定は誰がするのか
- 責任問題の確認等
荷主さんにおいても管理者さんだけが理解をしているのではなく、積込担当者さんやフォークマンなどにも事前に周知してもらうことも大切です。
法改正の直後では警察官も知らないという場合もあります。
トラブルが起きないようにするために、事前の準備が必要です。
まずは社内で確認をしていくことから始めていきましょう。