運送会社を運営していくと車庫の増設や移動はつきものです。
地域によっていろいろな懸念事項はありますが、【申請上の要件】と【実務上の要件】の視点で注意が必要です。
申請上の要件
法令に違反していないこと
この法令とは農地法、都市計画法、建築基準法、などが代表的な法令ですが、これ以外にも地域の条例などに違反していないかを確認する必要があります。
市街化地域か市街化調整区域か + 用途地域の確認
市街化調整区域
まずは市街化区域か市街化調整区域かの確認が必要です。
「営業所」の場合は市街化調整区域内では基本的に認可が下りません。
「営業所のとなりにある土地を車庫として申請する場合」は難しくなります。
昭和43年の市街化調整区域の指定前から「宅地」として利用されていたことが確認できれば建物を建てることが出来ましたが、各地域の条例によって許可制度となっているため、基本的には候補に入れない方が良いです。
用途地域
「営業所のとなりにある土地を車庫として申請する場合」は確認が必要ですが、「車庫の申請だけ」をする場合には用途地域は関係ありません。
ただし、農地は車庫として使用することが出来ません。
地目が「田」や「畑」の場合には農地転用をしなければなりません。
車庫の近くに営業所を移す場合や車庫内にコンテナハウスを入れるケースもありますので、「営業所と併設していない場合」でも今後のためにも用途地域の確認をしておきましょう。
車庫に屋根はあるか
車庫に屋根がある場合を「有蓋車庫」と言い、「ゆうがいしゃこ」と読みます。
屋根がない場合を「無蓋車庫」と言い、「むがいしゃこ」と読みます。
無蓋車庫は青空駐車場と呼ばれたりもしていますね。
多くの車庫はこの無蓋車庫だと思いますが、理由があります。
倉庫などの車庫を駐車場として使いたい場合は建築基準法や消防法をきちんとクリアした状態で申請することが必要だからです。
自前の倉庫などの場合には消防法をクリアするための改築リフォームや書類の準備ができますが、賃貸の場合にはオーナーさんにやってもらうことになります。
倉庫などの建物の中を車庫利用する場合にはオーナーさんにも契約書や承諾書で事前に了承してもらうことが必要なので、慎重に検討をする必要があります。
違法建築物はないか
車庫として使う駐車場の敷地内に、違法に建てられている建築物やプレハブコンテナなどがないか確認していきます。
青空駐車場として申請をする敷地内にプレハブなどがある場合は、地域によっては申請を認めてくれません。
(青空駐車場=屋根も建物もない地面だけの駐車場のこと)
コンテナも物置としての倉庫であればほぼ認めらますが、現在は申請時に車庫の写真を必ず添付するので、書類上でもコンテナ分のスペースを引いた求積図を作成して申請する必要があります。
人が入れるプレハブや違法建築物の場合は地域によって取扱いが違いますが、「休憩所や営業所としては使いません」と宣誓した書類を添付して申請を通すこともありますが、事前確認は必ずおこなうようにしてください。
営業所との距離
営業所との距離は直線距離で10km以内(地域によって5~20km)にあることが要件です。
これも地域によって変わりますが、車庫検討時に最初に確認する項目の一つです。
10km以内という要件のときに「10.01km」の場合はどうでしょうか?
【結論】認めてもらえません。
微妙な距離の位置の場合は認めてくれても良い気がしますが、結論としては認めてもらえません。
ギリギリの距離の場合こそ運輸局でもしっかりと調べているので、少しでも要件の距離を超えてしまう場合には、その車庫は諦めて別の車庫を探すようにしましょう。
前面道路
前面道路が国道の場合
前面道路が国道の場合は、基本的には問題ありません。
国道からトラックが直接入場できる車庫は運送業に関わらず需要があるので、もし空いている場所を見つけた場合はラッキーかもしれません。
何故、その土地が空いているのか、マイナス要素も確認をしていきましょう。
前面道路が国道ではない場合
前面の道路幅が6.5m以上ある場合
上から見た図です。
車庫の出入口の道路の幅が6.5m以上あればほぼ大丈夫です。
だいたいのトラックの横幅は2.5m(2.49m)以内に収まります。
図のように6.5mが必要なのは道路部分ですので、歩道は含めずに道路幅を計測しておくと安心です。
実際の申請書類では、「道路幅の証明書」の原本の提出が必要ですので、その際は道路を管理している都道府県、市区町村、または土木事務所などに証明書の発行を申請をします。
前面の道路幅が6.5mに足りない場合
6.5mに足りない場合ですが、その道は交通量が少ない道路、相互通行が可能な道路や一方通行路などではないでしょうか?
道路によっては車両制限令の指定の有無によって、通行できる車両幅が変わります。
また、車両制限令の指定がされていない道路や認定外の道路では管理者から通行の認可を取得することで、車庫として利用できる場合があります。
このような場合には、道路管理者の確認、現地道路の測定、写真撮影、周辺環境の地図等を用意をしていきます。
さらに「ウチはトラックも4t車を使うことがなく、2t車しか使わない」と言った場合は上記の図の2.5mの部分も「2.1m」として計算することが出来るので、「6.5mに足りないから諦めようかな」と考える前にチェックをしてみてください。
「前面道路が3mしかありません!」というケースでも、申請が通る可能性はあります。
市区町村などに道路ごとに個別で許可を取得したり、通行認定を取得することを検討していきます。
また、「大型進入禁止の標識がある」というケースや「私道や農道、組合の道路をまたいでいる」といったケースでも申請が通る可能性はあります。
弊所でも様々なケースで申請をおこなっていますが、このような場合には費用対効果の面でも、当サポートセンターなどの専門家にご相談されることをお薦め致します。
実務上の要件
地域ごとのローカルルールの確認や今後のトラブルがないように想定をしておく必要があります。
弊所では全国の車庫申請をお手伝いしていますが、運輸局ごとの許可基準が存在します。
貨物自動車運送事業法に規定する許可の基準に基づいて、地方運輸局が独自に定めているルールがありますが、かなり厳しく細かい運輸局もありますので注意が必要です。
車庫の明示
車庫の出入口が前面道路の地続きになっている場合には、車庫の出入口以外の道路との境界に部分に、見通しのよいフェンス等(固定物)を設置して、車庫の出入口であることを明示することを求められる場合があります。
車庫の出入口だと分かるようにする必要があるということですね。
車庫出入口の横断歩道など
車庫の出入口付近が歩行者が通るなどトラックの出入りに注意が必要な立地の場合です。
- 交差点、曲がり角、横断歩道ーーーーーーー5m
- バス停留所、踏切ーーーーーーーーーーー10m
このような車庫は申請が通らない場合もあります。
車庫出入口付近の学校など
出入口周辺に学校や幼稚園、保育園、公園などがある場合は多くの歩行者が通る可能性がありますので、申請前に事前に現地確認をして、危険箇所がないか確認した方がよいです。
車庫へのバック入場
トラックが車庫に入る際にバック入場をして停車するつもりでいる場合も注意が必要です。
車庫内で転回出来ない車庫は多く、スペースの問題でバック入場をすることでしか車庫に入れないというケースはよく見かけます。
しかし、地域によってはNGとなってしまうため、そのような地域の場合には車庫内で転回できることが分かる図面や写真などを用意して説明できるようにしなければなりません。
車庫の安全対策の指導
車庫にもよりますが、車庫の敷地内に停止指導線を引いたり、カーブミラーを設置することなどの指導がある場合もあります。
また、前面道路が通行量が多い場合には右折入場を避け、左折入場とした方がよい車庫もあります。
車庫が未舗装の場合には、雨の際に道路へ土砂が流出しないように対策を取らなければなりません。
特車申請や制限外積載許可
幅や重さが基準値を超えているトレーラーや貨物の運搬が決まっている場合は、車庫までの道路が特殊車両通行許可や制限外積載の許可が下りそうか検討をしておく必要があります。
その他、周りの環境
周囲に住宅街や怪しい会社などがある場合も注意です。
トラックはどうしてもエンジン音や排気音が出てしまいますし、深夜や早朝の出発などは当たり前です。
近くに住宅街などがある場合には、仮に車庫としての認可が下りたとしてもクレームや通報などをされてしまう恐れがあります。
運送会社はトラックが資本です。タイヤにイタズラでもされたら仕事になりませんので、事前に現地をよく確認してから決めていくことが必要です。
いかがでしたでしょうか。
注意点はいろいろとありますが、これらを必ず事前に確認をしてから申請をしていくようにしてください。
時間がない・解決しない・よく分からない等の場合には運送業サポートにお任せください。