運送会社は「新たな拠点を構える」ことで、事業の幅が大きく広がります。
地場輸送の場合は点呼・休憩・荷扱の拠点として、長距離輸送の場合は帰り荷が確保しやすくなるなど、荷主さんや周辺環境に合わせて戦略的に営業所の新設を検討していかなければなりません。
最初に確認すること
営業所を新しく作りたい場合は、「人」や「トラック」についても検討が必要ですが、まずは「建物」について確認していきます。
運送会社に適していそうな建物(事務所)でも、実際は運送会社の営業所として使用できないケースもあるので注意が必要です。
車庫をどうするか
営業所の新設は「車庫も新しく作る場合」と「車庫は用意しない場合」があります。
通常は営業所の近くに車庫も用意する場合がほとんどだとは思いますが、「車庫をどうするか」を最初に決断しておくことが重要です。
車庫も用意する場合には「車庫」と「営業所」の距離が10km以内(地域によっては5km~20km)でなければならないなど、多くの「車庫」の要件をクリアしなければなりません。
立地条件
営業所として構える場所は、図面上での確認に加えて現地へ行って確かめることも必須です。
建物については「この建物で事務所として使ってよいか」が決められています。
基本的に「市街化調整区域」と「市街化区域」の確認をし、「市街化調整区域」では事務所として使用することは難しいと考えておいてください。
市街化調整区域だった場合でも昭和45年以前からある建物の例外などはありますが、ほぼ難しいといえるでしょう。
市街化調整区域は、車庫としては使用できる場合が多いので、トレーラーハウスを営業所として登録するという方法も取れるかもしれません。
農地かどうか
土地の「地目」を確認します。
「地目」が「農地」の場合には営業所や休憩所としては使用出来ません。
ただし、車庫は「農地」であっても使用することが出来ます。
都市計画法に抵触しているか
都市計画法は「用途地域の確認」をしていくことで確認できます。
以下の手順で確認していきます。
- 「市街化区域」か「市街化調整区域」かを確認する
- 「建築制限があるか」を確認する
市街化調整区域とは、市街化になることを調整(制限)されている地域です。
この市街化調整区域内は建物を建てることを制限されており、営業所としては利用できません。
ただし、車庫(建物ではない車庫)としては利用することができます。
次に、建築制限があるかを確認します。
以下の別表で確認していきます。
第一種低層住居専用地域 | 第二種低層住居専用地域 | 第一種中高層住居専用地域 | 第一種中高層住居専用地域 | 第一種住居地域 | |
床面積 150㎡以下 | 不可 | 不可 | 不可 | (要確認) | 可 |
床面積 500㎡以下 | 不可 | 不可 | 不可 | (要確認) | 可 |
床面積 1,500㎡以下 | 不可 | 不可 | 不可 | (要確認) | 可 |
床面積 3,000㎡以下 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 | 不可 |
建築制限の確認をするときに「第一種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」などのワードを見つけた場合は注意をして確認してください。
これら以外の「商業地域」や「工業地域」などの文言であれば問題はありません。
建築物のその他の確認
・コンテナハウスやトレーラハウスでも許可される場合はあります。
コンテナの場合は電気や水道などを用意できるように建築士に建築確認をしてもらう必要があります。
・トレーラーハウスの場合は市街化調整区域内でもナンバーを取った状態で「営業所」として登録をできるケースがあります。
トレーラーハウスでの営業所を検討している場合はお早めに当事務所へご連絡ください。
賃貸の場合
賃貸物件などの場合は「事業用の営業所として」「事業用の車庫として」の賃貸借契約が結ばれていることが必要です。
契約書の中に「営業所」や「車庫」などの文言があることを確認していきます。
賃貸借の契約期間については以下のいずれかが要件となります。
- 契約期間が2年以上
- 自動更新
仮に、これらの文言がない場合でも再度契約書や承諾書を取り交わすことで要件を満たすことになります。
契約内容によっては、転貸(又貸し)のケースや運送業には貸してもらえないケースなどがありますので、事前に書面で確認することが必要となります。
営業所と車庫の距離
最初に車庫をどうするかを検討していると思いますが、改めて確認をしてください。
営業所と車庫は10km以内(地域によっては5km~20km)としなければなりません。
人員の配置
建物の要件の概要を確認したあとに人員をどのようにするか検討していきます。
最低人数の基準があるので、まずは最低人数を下回らないように人員配置を検討をしてください。
運行管理者(1人)
運行管理者の資格を持っている人が1人以上いることが必要です。
運行管理者の資格は、
- 受験して受かる
- 運送会社に在籍して5年間毎年講習を受講して取得する(受験無し)
の2つの方法があります。
受験をする場合にも事前に講習を受けなければなりません。
この講習は「基礎講習」というものを受けることで誰でも受験が可能です。
似た名前の講習として「一般講習」というものがあります。受験資格のためには「基礎講習」を受ける必要がありますので注意してください。
また、「運行管理補助者」は要件ではありませんが、実務としては補助者の選任は必須です。
「運行管理補助者」は資格の取得は必要ありませんが、3日間の「基礎講習」を受けることで選任が出来るようになりますので注意してください。
整備管理者(1人)
整備管理者も運行管理者と同様に運送会社には1人以上いることが必要になります。
整備管理者は
- 整備の実務経験2年以上 + 研修を受ける
- 整備士技能検定に合格している
の2つの方法があります。
1の方法では、現実的には運送会社(青ナンバー)の会社で整備管理補助者を経験していることでクリアできます。
つまり、資格を持っていなくても整備管理者になることができるということです。
この1の方法では、運送会社の実務経験証明書を取得する必要があります。
整備管理者の研修は「整備管理者選任前研修」という名前の研修です。会場は地域によって運輸局、支局、トラック協会などが指定されています。
似た名前の研修として「整備管理者選任後研修」というものがあります。間違えないように注意してください。
運転手(約5人)
まず、前提として「トラックの台数」は最低5台は必要です。
これは「各営業ごとに5台」を用意しなければなりません。
しかし、運転手に関しては5人がベストではありますが、「営業所ごとに5人」という要件はありません。
「営業所の新設時点では3人で、その後に2人以上採用する」という形でも可能な場合がありますので、運転手が揃えられない場合や既存の営業所から運転手を異動させたくない場合はこのような方法をとることも検討すると良いでしょう。。
行政によって判断が違いますが、「説明書」等をつけて申請をことで受理をしてくれます。
営業所の申請をせずに稼働してしまっているケースも多く見かけますが、最近では本社の巡回指導の際に書類で発覚する場合やホームページの掲載状況で発覚する場合も見受けられます。
営業所を新しく作る場合や巡回指導でご不安な場合には是非お早めにご相談ください。
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